メール配信サービスは、配信に失敗したメールを2つに分類します。どちらに分類されるかで、そのアドレスのその後の扱いが決まります。ハードバウンスとソフトバウンスの違いは単純に聞こえます。ハードバウンスは恒久的、ソフトバウンスは一時的という区別です。しかし実際には、コードはラベルほど明快ではありません。コストの大きい判断ミスは、グレーゾーンで起こります。ポリシーによるブロックをハードバウンスとして処理してしまう、何か月も「満杯」のままのメールボックスを放置する、ソフトバウンスが配信のたびに静かに繰り返される、といったケースです。このガイドでは、基本的な定義、コード別の一覧表、そして今日から採用できる対応ポリシーを紹介します。
結論から#
ハードバウンスとは、そのアドレスにはメールを永久に届けられない状態です。メールボックスやドメインが存在しない、またはアカウントが無効化されているといった場合です。1回でもハードバウンスしたアドレスは抑制してください。ソフトバウンスとは、今回は配信に失敗したものの、一時的な問題である状態です。メールボックスが満杯、サーバーが混雑している、まだ知らない送信者からのメールを保留している、といった場合です。再試行は配信サービスに任せ、複数回の別々の送信にわたってソフトバウンスが続く場合にだけ、そのアドレスを抑制します。
どちらなのかは、SMTPコードで判断できます。5xxは恒久的、4xxは一時的です。見逃せない例外が5.7.xです。このコードは、アドレスに対する判定ではなく、送信者自身(レピュテーション、コンテンツ、認証)に対するブロックを意味します。受信者を抑制しても解決しません。
ハードバウンスとは#
ハードバウンスは、恒久的な配信失敗です。受信側のサーバーが受信者を確認したうえで受け取りを拒否しており、再送しても答えは変わりません。主な原因は次のとおりです。
- メールボックスが存在しません。 最初から存在しなかった場合(入力ミスや架空の登録)と、今は存在しない場合(従業員の退職、アカウントの閉鎖)があります。
- ドメインが存在しない、またはメールサーバーがありません。
gmial.comのようなドメインのつづり間違いや、リブランディング後に失効した企業ドメインがよくある例です。 - アカウントが無効化されています。 プロバイダーは、長期間使われていないアカウントなどを無効化し、その後はそのアカウント宛てのメールを拒否します。
ハードバウンスが起こるたびに、確証のないアドレスに送信したことがメールプロバイダーに伝わります。1件だけなら誤差にすぎません。しかし継続的に発生すると、古くて管理が行き届いていないリストと見なされます。それはバウンスしたメールだけでなく、送信するすべてのメールに影響する送信者レピュテーションの問題です。
ソフトバウンスとは#
ソフトバウンスの意味を一言で言うと、解消する可能性のある理由で配信に失敗した状態です。アドレス自体はまったく問題ない場合もあります。よくある原因は次のとおりです。
- メールボックスが満杯です。 所有者がメールを削除すれば、再び受信できるようになります。
- 受信側のサーバーがダウン、過負荷、または到達不能です。
- グレーリスティングです。 サーバーは見慣れない送信者のメールをいったん保留し、数分後の再試行を受け付けます。
- スロットリングです。 プロバイダーがメールの受け付け速度を制限しています。多くの場合、送信量の急増やレピュテーションの低下が原因です。
送信サーバーはソフトバウンスを自動的に再試行します。再試行の期間は配信サービスによって数時間から数日で、何もしなくても最終的に配信されるケースが多くあります。再試行中の失敗を「deferral(保留)」と呼び、再試行を断念した時点で初めてソフトバウンスとして記録する配信サービスもあります。同じ送信でもツールによってソフトバウンス数が異なるのは、このためです。
見分け方:コードを読む#
配信サービスでバウンスの詳細を開きます。多くの場合、「bounce reason」や「diagnostic code」が表示されます。これは受信側のサーバーが返した生の応答です。
550 5.1.1 The email account that you tried to reach does not exist.
この応答は3つの部分で構成されています。基本コード(550)、拡張ステータスコード(5.1.1)、そして人間が読むためのテキストです。どちらのコードも、先頭の数字が大きな手がかりになります。5は恒久的、4は一時的です。拡張コードの中央の数字は、失敗の対象を表します。x.1.xはアドレス、x.2.xはメールボックス、x.3.xはメールシステム、x.4.xはネットワーク、x.7.xはセキュリティまたはポリシーです。テキストの表現はプロバイダーによって異なるため、テキストよりもコードを信頼してください。
SMTP応答コードのガイドでは、コードの仕組みを詳しく解説しています。無料のSMTPエラーコード検索に応答を貼り付ければ、意味を確認できます。マーケターが特によく目にするコードは次のとおりです。
| コード | 通常の意味 | ハードかソフトか | 対応 |
|---|---|---|---|
5.1.1(多くは550とともに) | メールボックスが存在しない:「user unknown」「no such user」 | ハード | 最初のバウンスで抑制します。 |
5.1.2 | ドメインが存在しない、またはメールを受信できない | ハード | 抑制します。ドメインが明らかな入力ミスなら、自分で修正せず、本人に正しいアドレスを確認してください。 |
5.2.1 | メールボックスは存在するが無効化されている | 実質的にハード | 抑制します。無効化されたアカウントが復活することはまれです。 |
4.2.2(多くは452とともに) | メールボックスが満杯 | ソフト | 再試行に任せます。何回か送信しても満杯のままなら抑制します。 |
5.2.2(多くは552とともに) | メールボックスが満杯だが、恒久的なコードで報告されている | ソフトとして扱う | 4.2.2と同じです。標準仕様では、メールボックスの満杯は持続的な一時的失敗とされています。 |
5.3.4(多くは552とともに) | メッセージがサーバーの受け入れ上限を超えている | どちらでもない:メッセージの問題 | 添付ファイルや画像を小さくします。アドレスは抑制しないでください。 |
5.7.1、5.7.26などの5.7.x | ポリシーによるブロック:レピュテーション、コンテンツ、ブラックリストへの登録、または認証の失敗 | 恒久的なコードだが、アドレスの問題ではない | 受信者は抑制しないでください。原因を解消してから送信を再開します。 |
4.7.x(多くは421または451とともに) | グレーリスティングまたはスロットリング:「try again later」 | ソフト | 再試行に任せます。送信のたびに特定のプロバイダー全体で発生する場合は、レピュテーションを確認してください。 |
4.4.1、4.4.7 | サーバーに到達できなかった、または送信側が再試行期間を過ぎて断念した | ソフト | 1回限りなら無視して構いません。1つのドメインで何日も失敗が続く場合は、そのMXレコードを確認してください。 |
サーバーが常にコードを正確に使うとは限りません。ポリシーによるブロックに、単純な550だけを返すサーバーがあります。また、一時的な問題を明確に説明するテキストなのに、5xxを返すサーバーもあります。基本コード、拡張コード、テキストの内容が食い違う場合は、通常、拡張コードとテキストのほうが実態を正しく表しています。
判断が難しいケース#
5.7.xのブロックはアドレスではなく自分の問題#
550 5.7.1は先頭が5のため、多くの配信サービスではハードバウンスとして数えられます。しかしサーバーは、メールボックスが存在しないと言っているわけではありません。送信者のメールを拒否しているのです。送信元のIPやドメインがブラックリストに載っている、そのプロバイダーでのレピュテーションが下がっている、コンテンツがフィルターに引っかかった、認証に失敗した、といった原因が考えられます。たとえばGmailは、認証チェックに失敗したメールに5.7.26を使います。
見分けるポイントはパターンです。ブロックは、1つのプロバイダーの多数の受信者に一斉に影響します。実在するメールボックスが同じ1分間にすべて使えなくなることはありません。これらの受信者を抑制すると、今後もメールを受け取りたい購読者を失うだけで、ブロックは残ったままです。まずバウンスのテキストを読んでください。ブラックリストの名前や、プロバイダーのポリシーページへのリンクが書かれていることがよくあります。次に、送信元IPが公開ブラックリストに載っていないか確認します。ドメインについては、リスト運営者自身のツール(例:Spamhaus checker)で調べてください。さらに、SPF、DKIM、DMARCに成功していることを確かめ、登録が原因なら削除の手順に従います。ブロックが解除されれば、これらのアドレスには再び送信できます。
いつまでも解消しない満杯のメールボックス#
メールボックスの満杯は、典型的なソフトバウンスです。アドレスは存在し、所有者が空き容量を作れます。ただし、誰も読まなくなったために受信トレイが埋まることもあります。「mailbox full」が数週間にわたって送信のたびに返ってくる場合は、放棄されたアドレスとして扱ってください。放棄されたアカウントは、いずれプロバイダーに無効化され、そうなるとハードバウンスに変わります。長期間休眠していたアドレスがスパムトラップとして再利用されることもあります。どちらかが起こる前に、満杯が続くメールボックスは抑制してください。
グレーリスティングとスロットリングはレポート上では区別がつかない#
どちらも4.7.xコードの4xx応答として届き、どちらも「try again later」と伝えます。グレーリスティングは一度だけの通行料のようなものです。サーバーは見慣れない送信者のメールをいったん保留し、再試行を受け付け、その後は通常、送信者を覚えています。スロットリングは、プロバイダーによるメールの流量制限です。個々のグレーリスティングのバウンスに対して、対応は必要ありません。一方、プロバイダー全体で送信のたびにスロットリングが発生する場合は、レピュテーション低下の早期警告です。送信ペースを落とし、迷惑メール報告率を確認し、Google Postmaster Toolsでドメインがどう評価されているかを見てください。
繰り返されるソフトバウンス#
1回のソフトバウンスは問題ではありません。しかし同じアドレスが5回のキャンペーンで連続してソフトバウンスしているなら、それは実質的に使えないアドレスです。放棄されたメールボックス、消滅したメールサーバー、設定が不完全なドメインなどが考えられます。失敗が続いた時点でハードバウンスに変換する配信サービスは多くあります。変換しない場合でも、下記のポリシーが役立ちます。
「配信済み」のあとに届くバウンス#
サーバーによっては、メッセージをいったん受け付けてから拒否し、数分後や数時間後にバウンスメッセージを返します。企業のセキュリティゲートウェイやキャッチオールドメインでは、この動作がよく見られます。そのため、配信サービスでは、まず配信済みと記録され、その後にバウンスとして記録されることがあります。遅れて届いたバウンスは、同じコードの即時バウンスとまったく同じように扱ってください。
自動応答はバウンスではない#
不在通知や「退職しました」という通知は、配信されたメールであり、バウンスではありません。不在通知を返したアドレスには問題がありません。「退職しました」という返信は、そのメールボックスがまもなくハードバウンスを返し始めるという早期警告です。今のうちに連絡先を更新するか、リストから外してください。営業用データベースでは、後任者を探すきっかけにもなります。この習慣はCRMデータの衛生管理で解説しています。
採用できるバウンス対応ポリシー#
アドレスごとに判断することがないよう、ルールを一度書き出しておきます。標準として妥当なルールは次のとおりです。
| 発生した事象 | ルール |
|---|---|
ハードバウンス(5.1.1、5.1.2、
5.2.1) | 1回目で恒久的に抑制します。再試行も、もう一度のチャンスもありません。 |
| 1回のソフトバウンス | 何もしません。再試行は配信サービスに任せます。 |
| 繰り返されるソフトバウンス | 別々の送信で連続して3~5回ソフトバウンスしたら抑制します。 |
| 数週間にわたるメールボックスの満杯 | 抑制するか、他の非アクティブなアドレスとともにサンセットポリシーの対象にします。 |
ポリシーによるブロック(5.7.x) | 抑制しません。レピュテーション、認証、コンテンツのいずれかを修正してから、送信を再開します。 |
| メッセージが大きすぎる | メッセージを修正します。アドレスに問題はありません。 |
このポリシーを運用するうえで、いくつか押さえておきたい点があります。
- 「3~5回」は一般的な慣行であり、決まりではありません。 数字を1つ決めて、一貫して適用してください。レピュテーションに余裕のない送信者は、小さい数字のほうが安全です。
- 「連続」とは、配信に1回成功するとカウントがリセットされることを意味します。 カウントするのは別々の送信であり、1通のメッセージに対する配信サービスの自動再試行ではありません。
- 削除ではなく、抑制してください。 抑制したアドレスは記録に残るため、将来のインポートで知らないうちに再登録されることはありません。
- 抑制リストは自分で持ち出してください。 配信サービスを変更しても、抑制リストは自動では移行されません。抑制リストの持ち出しは、メール配信サービスを安全に切り替えるための最初の手順の1つです。
ダッシュボードではなくコードでバウンスを処理している場合は、バウンス分類器の構築で、これと同じルールを関数にできます。
配信サービスが自動で行うこと#
ほとんどの配信サービスは、すでにこのポリシーに近い処理を自動で行っています。
- ハードバウンスは自動的に抑制されます。 通常は1回目で抑制されます。
- ソフトバウンスは再試行されます。 期間は数時間から数日です。失敗が続くアドレスは、最終的にハードバウンスに変換されるか、抑制されます。具体的なしきい値は配信サービスによって異なり、公開されていないこともあります。
- ポリシーによるブロックの扱いは、配信サービスによってまちまちです。
5.7.xの拒否を別の「ブロック」カテゴリに分類し、アドレスを有効なまま残すサービスがあります。一方で、ハードバウンスとして処理するサービスもあります。利用中のサービスがどちらなのかを確認してください。まとめて処理するサービスでは、1回のブロックで実在する購読者が何百件も抑制されることがあります。
どの配信サービスにもできないのは、最初のバウンスが起こる前にアドレスを抑制することです。自動ルールが働く時点で、そのバウンスはすでに送信者の評価に影響しています。
注視すべきはハードバウンスの件数#
レピュテーションに打撃を与えるのはハードバウンスです。そのため、ソフトバウンスと合算せず、ハードバウンス率を単独で追跡してください。目安は、約2%未満なら通常の範囲、2%は警告ライン、約5%はスロットリングやアカウント停止の根拠とする配信サービスが多い水準です。登録時に検証し、定期的にクリーニングしているリストなら、通常は1%を大きく下回ります。自社の水準を知るには、バウンス率計算ツールに数値を入力し、業界別のバウンス率ベンチマークと比較してください。プロバイダーがこの数値を重く見る理由は、バウンス率が重要な理由で解説しています。
送信前に両方を防ぐ#
メールアドレス検証を使うと、バウンスの判断を送信前に移せます。SMTPによるメールボックス確認では、メールを送らずに、そのメールボックスが存在するかどうかを受信側のサーバーに問い合わせます。Qualisendの4つの判定は、上記のバウンスの種類に対応しています。
- Undeliverable は、将来のハードバウンスに相当します。拒否されたメールボックス、メールの経路がないドメイン、無効な構文、無効化されたアカウント(
disabledサブフラグ)が該当します。評価に影響する前に抑制してください。 - Risky(
full_mailbox) は、将来のソフトバウンスに相当します。慎重に送信し、次回のクリーニングで再チェックしてください。満杯が続いている場合は、放棄されている可能性が高いと考えられます。 - Risky(
catch_all) は、サーバーがすべてのメールを受け付けるため、メールボックスの存在を確認できない状態です。これらは、流量を絞った専用のセグメントに分けて管理してください。 - Unknown は、サーバーから確定的な応答が得られなかった状態です。原因はグレーリスティングであることが多くあります。抑制せず、後で再検証してください。Unknownの判定はクレジットが返金されます。
登録時のチェックでは、「did you mean」の提案によって入力ミスも見つかります(gmial.comはgmail.comになります)。よくあるメールアドレスの入力ミスは、フォームの段階で防げるほどパターンが決まっています。すでにあるリストについては、メールリスト衛生チェックリストで一連の作業をまとめています。Qualisendの1ページのリスト健全性レポートでは、リストのバウンスリスクをHealthy(2%未満)、Needs attention(2~5%)、At risk(5%超)に分類します。連絡先がメール配信サービスにある場合は、ネイティブ連携でその場でクリーニングし、判定結果をタグまたはフィールドとして書き戻せます。
検証では、送信側の問題である5.7.xのブロックは防げません。また、最後のチェックから次の送信までの間に、アドレスが使えなくなることもあります。だからこそ、検証と、文書化したバウンスポリシーの両方が必要です。
よくある質問
01ハードバウンスとソフトバウンスの違いは何ですか?
ハードバウンスは恒久的な失敗です。メールボックスやドメインが存在しない、またはアカウントが無効化されている場合で、サーバーは5.1.1などの5xxコードを返します。ソフトバウンスは一時的な失敗です。メールボックスの満杯、サーバーの混雑、グレーリスティング、スロットリングなどが原因で、4xxコードで届きます。ハードバウンスはすぐに抑制し、ソフトバウンスは再試行に任せます。
02ソフトバウンスとは何ですか?心配すべきですか?
ソフトバウンスとは、解消する可能性のある理由で配信に失敗した状態で、配信サービスが自動的に再試行します。1回だけなら心配する必要はありません。注意が必要なのは、同じアドレスが複数回の送信で連続してソフトバウンスする場合や、スロットリングの応答が1つのプロバイダー全体に一斉に出る場合です。後者は、アドレスの不良ではなく、レピュテーションの問題を示しています。
03ソフトバウンスが何回続いたらアドレスを削除すべきですか?
決まった回数はありません。一般的な慣行として、別々の送信で連続して3~5回ソフトバウンスしたアドレスを抑制し、配信に1回成功したらカウントをリセットします。数週間にわたって満杯のままのメールボックスは、放棄された受信トレイがいずれ無効化または再利用されるため、早めに削除する候補になります。
045.7.1エラーでバウンスしたアドレスは削除すべきですか?
いいえ。5.7.xコードは、ブラックリストへの登録、レピュテーションの低下、コンテンツフィルター、認証の失敗といったポリシー上の理由で、受信側のサーバーがメールを拒否したことを意味します。多くの場合、アドレス自体には問題がありません。バウンスのテキストを読み、送信元IPのブラックリスト登録状況を確認し(ドメインはリスト運営者自身の検索ツールで確認します)、認証や登録の問題を解消してください。ブロックが解除されたら送信を再開します。
05ハードバウンスが誤りだったということはありますか?
はい。主に2つのケースがあります。配信サービスがポリシーによるブロックをハードバウンスとして処理した場合と、受信側の設定に珍しい不備があった場合です。大切な連絡先がハードバウンスしたものの、たとえば最近そのアドレスから返信があったなど、アドレスが有効だと考えられる理由がある場合は、抑制を解除する前にそのアドレスを検証し、別の連絡手段でも確認してください。
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