開封率が急落した、あるいは取引先から「メールが迷惑メールに入っている」と言われた場合、最初に切り分けたい原因の1つがブラックリストへの登録です。確認は無料で、すぐに終わります。ただし、何を確認し、どのリストを信頼し、結果をどう読むかを知っておく必要があります。あるブラックリストへの登録は、緊急事態を意味することもあれば、まったく問題にならないこともあるためです。
結論から#
ブラックリストに登録されているかを確認するには、メールの送信に使っている送信IPと送信ドメインをすべて調べます。IPは、無料のブラックリストチェックのような複数リスト対応の検索にかけ、ヒットがあれば運営元自身のページで確認します。ドメインは、Spamhaus DBLのようなドメイン単位のDNSブラックリストで調べます。さらに、リスト名がそのまま書かれていることも多いバウンスメッセージも読みます。ヒットがもたらす影響の大きさに応じて優先順位を付けます。Spamhausへの登録は、多くの受信側が参照しているため緊急です。あまり知られていないリストへの登録は、ほとんど影響しないこともあります。登録が見つかった場合は、原因を修正してから削除を申請します。順序はこのとおりです。
まず、実際の送信元を特定する#
確認できるのは、把握しているものだけです。判定の対象になるのは次の2つです。
- 送信IP:メールが実際に送り出されるアドレスです。ESP(Klaviyo、Mailchimp、トランザクションメールのサービスなど)経由で送信している場合、通常は自社のサーバーではなく、ESPの共有IPです。実際の送信IPは、送信したメッセージの
Receivedヘッダーか、サービスのドキュメントで確認できます。 - 送信ドメイン:
Fromアドレスのドメインと、サブドメイン、メール内のリンク先のドメインです。
配信ストリームごとに確認する対象#
多くの送信者は複数の配信ストリームを持っており、登録は誰も確認していないストリームに潜みがちです。まず、すべてを洗い出します。
| ストリーム | 調べる対象 | 確認できる場所 |
|---|---|---|
| ESP経由のマーケティングメール | ESPの送信IP(共有または専用) | 受信したキャンペーンメールのヘッダー |
| トランザクションメール | 利用中のサービスの送信IP | 実際の領収書やパスワードリセットのメールのヘッダー |
| 自社サーバーやWebホストからのフォーム通知とアラート | そのサーバーのアウトバウンドIP | フォーム通知のメールのヘッダー |
| Google WorkspaceまたはMicrosoft 365 | なし。共有IPはプロバイダーが管理しています | 拒否された場合はバウンスメッセージ |
| 自社のドメイン | Fromドメイン、送信用サブドメイン、カスタムのReturn-PathまたはDKIMドメイン、すべてのリンク、トラッキング、画像のドメイン | DNSとESPの設定、送信したメッセージ内のリンク |
メッセージのヘッダーから送信IPを見つける#
受信側が判定するのは、メッセージを自分たちに引き渡したサーバーのIPです。そのため、見つけるべきはこのIPです。
- 確認したいストリームから、自分で管理しているGmailまたはOutlookのメールボックスに実際のメッセージを送信し、元のソースを開きます。Web版のGmailでは「Show original」で、ほとんどのWebメールやデスクトップクライアントにも同様の機能がありますが、スマートフォンのアプリには通常ありません。
- 受信者のサーバーがメッセージを受け付けたホップを見つけます。
Receivedの行を上から順に読み、受信者のサーバー(たとえばmx.google.com)がbyに入り、その外側のサーバーがfromに入っている最初の行で止めます。そのサーバー名の横にあるIPが、送信IPです。SPFの結果の行にも、通常はclient-ip=として同じIPが書かれています。 - または、ソースをメールヘッダー解析に貼り付けます。配信順にすべてのホップが一覧表示され、
byのサーバーが受信者のサーバーである最初のホップに、送信IPが表示されます。
Received: from mta7.esp.example (mta7.esp.example. [203.0.113.45])
by mx.google.com with ESMTPS id ...
Received-SPF: pass (google.com: domain of bounce@news.example.com designates
203.0.113.45 as permitted sender) client-ip=203.0.113.45;
WebサイトのIPを代わりに調べないでください。ドメインが指すアドレス(Aレコード)は、通常、メールを送信しているサーバーではなく、Webホストのものです。また、一番下のホップも採用しないでください。多くの場合、自分自身の接続か、ESP内部のサーバーです。
IPにコロンが含まれる場合(2001:db8::25)は、IPv6です。当社のチェックツールが対応しているのはIPv4のみのため、各運営元のページで検索してください。SpamhausのルックアップはIPv6に対応しています。
確認の方法#
IPとドメインは別々のリストに登録され、検索方法も異なります。また、どの検索にも表示されない情報は、バウンスメッセージやプロバイダーのダッシュボードで補います。
各送信IPを調べる#
まず、複数リスト対応の検索から始めます。無料のブラックリストチェックは、広く知られた公開IPブラックリストをライブDNSで検索し、すべての結果を1つの画面に表示します。入力するのはドメインではなく、ヘッダーで見つけたIPです。
次に、ヒットがあれば運営元自身のチェックページで確認します。重要なリストは、それぞれ独自の検索を提供しています。SpamhausにはIPとドメインの両方の検索があり、Spamhausへの登録については正確な情報源で、削除手続きにもそのままつながります。BarracudaとSpamCopも、barracudacentral.orgとspamcop.netで無料の検索を提供しています。
リンク先も含め、各ドメインを調べる#
Spamhaus DBL、SURBL、URIBLが登録するのは送信IPではなくドメインで、受信側は送信ドメインだけでなく、メッセージ内のリンクとも照合します。ドメインの登録は、IPやESPを変えても付いて回ります。
Fromドメイン、送信用サブドメイン、すべてのリンク、トラッキング、画像のドメインを、各運営元のページで調べます。SpamhausのルックアップはDBLを対象とし、SURBLとURIBLはそれぞれのサイトで検索を提供しています。リンク先のドメインを飛ばさないでください。ESPが共有するクリックトラッキング用ドメインやURL短縮サービスが原因で、自社のIPとドメインに問題がなくても、メッセージがフィルタリングされることがあります。
この手順は、当社のブラックリストチェックでは行えません。対象はIPのみのため、ドメインを入力しても、わかるのはWebサーバーの状態であり、そのドメインのレピュテーションではありません。
バウンスメッセージとダッシュボードを読む#
バウンスは最も直接的な証拠です。ブラックリストを使うサーバーからの拒否には、通常、リスト名が書かれています。丸められたバウンス率ではなく、ESPやサーバーのログにある生のバウンスメッセージを読んでください。プロバイダー別の拒否メッセージはブラックリストに載るとどうなるかにまとめており、コードの意味はSMTPコード検索で確認できます。
Google Postmaster Toolsでは、Gmailでの迷惑メール率、コンプライアンスの状況、配信エラーを確認できます。Microsoft SNDSでは、自分で管理しているIPのデータを確認できます。どちらも公開ブラックリストをチェックするものではありませんが、SNDSのIP Statusページには、Microsoft自身がブロックしているIPが表示されます。迷惑メール率の上昇や新しい配信エラーは、何か問題が起きている強い兆候です。
結果の読み方#
ヒットは出発点であり、結論ではありません。本当に登録されているかを確認し、そのリストを誰が使っているかで重みを判断します。
対処する前にヒットを確認する#
実際より悪く見える検索結果になるのは、次の2つの場合です。
- 拒否されたクエリ。 Spamhausは、大手のパブリックDNSリゾルバー経由の無料クエリには応答せず、エラーコードを返します。単純なツールはそのコードを登録として報告します。チェックツールではSpamhausに登録されていると出ても、Spamhaus自身の検索では登録されていないと出る場合は、Spamhausを信じてください。当社のチェックツールはこうした行を「No answer」と表示します。これはどちらとも判定できないという意味です。
- 終了したリスト。 SORBSは2024年6月に運用を終了し、NiX Spamも提供が終了しています。これらでフィルタリングしている受信側はないため、ヒットしても意味はありません。
確かなヒットについては、リスト名、正確なIPまたはドメイン、理由のテキスト、時刻を記録してください。原因の特定と削除申請に必要になります。
そのリストを誰が使っているかで重みを判断する#
Spamhaus SBL、CSS、XBL、DBLへの登録は、多くの受信側が判定に使っているため緊急です。Spamhaus PBLのヒットは、迷惑メールの送信を疑うものではありません。ISPが直接のメール送信に使うべきでないとしているIP範囲を示すものなので、適切なリレーまたはESP経由に切り替えてください。あまり知られていないリストや地域限定のリストは、受信者のほとんどに影響しないこともあります。リスト別の緊急度の一覧は、ブラックリストに載るとどうなるかにあります。
検索結果が問題なしでもメールがブロックされる場合#
公開リストで問題なしと出ても、安心はできません。メールがまだ拒否される場合は、ほかの3つの原因を調べます。
- メールプロバイダー独自のフィルタリング。 Gmail、Microsoft、Yahooは独自のレピュテーションシステムでブロックしており、ブラックリストの検索には表示されません。GmailとMicrosoftでの対処は、削除ガイドで解説しています。
- 商用フィード。 企業のメールゲートウェイは、ProofpointやInvaluementのデータでフィルタリングすることが多く、当社の無料チェックツールはこれらを検索しません。拒否が企業ドメインから来ている場合は、次にこちらを確認してください。ProofpointにはIPの独自検索があります。
- 認証の不備。 SPF、DKIM、DMARCの設定が失敗していると、登録がなくてもメールは拒否されます。ドメインを送信ドメイン認証チェックにかけてください。
登録が示しているもの#
ブラックリストは病気ではなく症状です。登録の原因をたどると、ほとんどが衛生管理の不備に行き着きます。スパムトラップへの送信、迷惑メール報告の急増、古いリストや購入したリストからのハードバウンスの継続、あるいは侵害されたアカウントによる送信などです。どれに当たるかを特定することが、登録から抜け出す最初の一歩であり、再び登録されないための一歩でもあります。
確認するタイミングと自動化#
次のいずれかが起きたら、完全な確認を実施してください。
- 開封率や到達率の急な低下、またはバウンスの急増。ブラックリスト登録の兆候をご覧ください。
- 大量送信の前。 たとえばブラックフライデーのキャンペーンなど、登録を修正する時間がまだあるうちに確認します。
- ESPやIPを変更した後。 新しいアドレスには、それぞれ独自の履歴があるためです(メールサービスの乗り換え)。
- セキュリティインシデントの後。 アカウントの侵害やWebサイトの乗っ取りなどです。
手動の検索で答えが出るのは、「今この時点で登録されているか?」だけです。しかし、登録は特定の瞬間に発生し、気づくまで損失が続きます。1回確認して終わりにすると、次の登録は指標が急落するまで気づかれません。この隙間を埋めるのがブラックリスト監視です。Qualisendのブラックリスト監視は、Spamhaus、Barracuda、SpamCopなどの主要なブラックリストに対して、ドメインとIPを24時間ごとに再チェックし、登録が発生したときと解除されたときにメールでお知らせします。
よくある質問
01自分のIPがブラックリストに載っているか確認するにはどうすればよいですか?
まず実際の送信IPを見つけます。送信したメッセージでは、受信者のサーバーがメッセージを受け付けたReceivedの行にあるIPか、SPFの結果の行にあるclient-ip=の値です。そのIPを、無料のブラックリストチェックのような複数リスト対応の検索にかけ、ヒットがあれば運営元自身のページ、特に重要なSpamhausで確認します。入力するのはドメインではなくIPそのものです。ドメインは通常、メールを送信しているサーバーではなく、Webホストを指しているためです。
02自社のドメインがブラックリストに載っているか確認するにはどうすればよいですか?
Fromドメイン、送信用サブドメイン、メール内のリンク先のドメインを、Spamhaus DBL、SURBL、URIBLなどのドメイン単位のリストで、各運営元の検索を使って調べます。当社を含め、IPのチェックツールではこれは調べられません。調べるのはドメイン自体ではなく、ドメインが指すIPだからです。送信IPにまったく問題がなくても、ドメインの登録によってメールがフィルタリングされることがあります。
03チェックツールではSpamhausに登録されていると出るのに、Spamhausでは登録されていないと出るのはなぜですか?
Spamhausは、大手のパブリックDNSリゾルバー経由の無料クエリには応答しません。判定の代わりにエラーコードを返し、単純なチェックツールはそのコードを登録として報告します。check.spamhaus.orgにあるSpamhaus自身の検索を信じてください。コードの意味は、削除ガイドの最初のステップで解説しています。
04ブラックリストの確認は無料でできますか?
はい。複数リスト対応の検索ツールも主要な運営元のチェックページも無料で、Google Postmaster ToolsとMicrosoft SNDSも、自分で管理するドメインとIPであれば無料で設定できます。確認そのものにコストはかかりません。コストになるのは、たまたま確認するまで登録が放置される時間です。だからこそ、送信者は確認を自動化します。
05ブラックリストに載っていないのにメールが迷惑メールに入るのはなぜですか?
ブラックリストは判断材料の1つにすぎません。弱い認証、低い送信者レピュテーション、高い迷惑メール報告率、迷惑メールらしい内容、あるいはウォームアップされていない新しいIPが原因でフィルタリングされることがあります。まず登録を除外し、そのうえで残りを順に調べてください。
1回の確認でわかるのは今日の状況であり、その変化まではわかりません。Qualisendのブラックリスト監視は、ドメインとIPを40以上のリストに対して24時間ごとに再チェックし、登録が発生したときと解除されたときにメールでお知らせします。まずリストを検証すれば、多くの送信者が登録される原因となる存在しないアドレスやスパムトラップも取り除けます。



